惑溺

その言葉に驚いて顔を見ると

「嘘だよ」

リョウが目を細めて私を見下ろしていた。


分かってる。
寂しがりやのリョウが、三年もずっとひとりでいるはずがない。

そんなの分かってる。

もしかしたら今だって、部屋で女の子がリョウの帰りを待ってるのかもしれない……。

期待しそうになる自分に、心の中でそう言い聞かせる。



「とりあえず、手帳返す」

そう言って差し出された赤い手帳。
私も慌ててバッグの中から銀色の鍵を取り出すと。

「いらない」

私が口を開く前に、鍵を握った手のひらを開かせないように暖かい手が私の手を優しく包んだ。

「その鍵、返さなくていい」

その言葉の意味を、どう受け取っていいのかわからずに首を傾げてリョウを見上げた。
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