惑溺


「相変わらず鈍いな」

私のその表情に、リョウは苦笑いしながら私に背を向けて歩き出す。


え?
行っちゃうの?

追いかけていいのか躊躇っている私に

「ほら、寒いから早く行くぞ」

と、振り返って手を差しのべた。



追いかけてそっと手のひらに触れる。
大きな暖かい手。

恐る恐る触れた私の手を

「冷たい」

と、文句をいいながら強く握りしめ歩き出す。



「どこに行くの?」

タクシーを捕まえようとするリョウに訊ねると、

「どこがいい?」

反対に聞き返された。
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