惑溺

冷えきった手に、暖かいリョウの唇の感触。

私を睨むようにまっすぐにみつめたまま、軽く顔を傾け左手の薬指の付け根を舌でなぞった。


「ん……!」

指の股を這う柔らかく湿った舌の感触に、思わず声が漏れて手を引っ込めた。

「や、やめてよッ。こんな所で!」

真っ赤になって叫ぶ私に、リョウはまた大袈裟なため息をついて見せる。

「本当に鈍いよな。
まぁいいや、続きは家についてからで」

激しく動揺する私を見て満足したように背を向けると、道路を行くタクシーを探すリョウ。

私はそっと彼に近づいて自分から手を繋いだ。
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