惑溺
楽しんでる。
身動きもできずに睨むことしかできない私を見下ろして。
まるで狩りをする獣みたいに、絶対的な力の差を見せつけて獲物がどんな反応をするのか楽しんでる。
この無駄な抵抗がいつまで続くか観察するかのように、余裕の笑みで私を捉える憎らしい男。
「素直になるまで離さない。
どうしてほしいのか言えよ」
耳元で低く獣が唸る。
鼓膜を震わす甘い誘惑。
「……離して」
お願い。
私を抱き締めて、激しいキスをして。
そう素直に言えば楽になるのに、私の中のくだらない理性と意地がそれを許さない。
すぐそこにある唇に触れたくて触れたくてたまらないのに。
私の口は、想いとは反対の言葉を吐きだす。