惑溺
 
カウンターの上に腰掛けると、背の高いリョウを見下ろす恰好になった。

いつも見上げてばかりいるから、こうやって彼を見下ろすなんてなんだか変な感じがする。

そんな事を考えているとリョウが手を伸ばし、ゆっくりと私の髪を耳にかけ優しく後頭部を抑えて引き寄せる。


「ちょ、ちょっと待って!
カクテルの名前を教えてくれるんでしょ?」

いつになく甘い雰囲気に私が慌てて声を上げると

「せっかちだな」

小さな吐息を吐くように笑って、強引に私の顔を引き寄せた。
そして耳元でぞくりとするくらい色っぽい声で囁く。




「慌てなくても、ゆっくり教えてやるよ」



< 427 / 507 >

この作品をシェア

pagetop