惑溺
 
「ちょっと、由佳!
あの人が由佳の知り合い!?カッコいいんだけどッ!!」

「あ、うん」

知り合いっていうか、付き合ってるんだけど……

そう続けようとした時

「知り合いねぇ……」

その会話が聞こえたのか、リョウが苦笑いしながら振り返った。


目を細め片方だけ口角を上げる、意地悪な微笑みで私を見て、意味ありげに肩を小さく上げて見せる。

そしてゆっくりとカウンターの中へ入って行く彼の後姿を見て

「カッコいー!」

沙織がキャーキャーいって喜んだ。


ああ……。
また言うタイミングを逃した。


うっとりとリョウの事を目で追う沙織を見て、お店に入る前にちゃんと、彼氏のお店だって言っておけばよかったと今更ながら後悔する。
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