惑溺
 
その無邪気な笑顔になんて返していいのか悩んでいるうちに

「あ、わたしも何かカクテル作ってほしいなー。
ギムレットかなんか、さっぱりしたの」

沙織からも注文を受け、リョウは私たちに背を向けカクテルの準備を始めた。



あー、相変わらず綺麗な背中だなぁ。
すっと伸びた彼の立ち姿を見ながら、ぼんやりと思った。

こうやってお店でカウンターの中で、仕事をしているリョウは、まるで手の届かない遠い人みたいだ。


冷蔵庫から出したライムをナイフで半分に切り、絞る長い指。
大きな手の中にぴったりと収まる銀色のシェイカー。
少しうつむいた顔が、はらりと落ちた黒い髪で隠れる。

軽く結んだ唇と、顎から首のラインが、ぞくりするほど綺麗で……

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