弟矢 ―四神剣伝説―
柵の壊れた箇所まで回りこむのは面倒だ。乙矢は柵を乗り越えながら、新蔵らに向かって必死に叫ぶ。

だが、そんな乙矢の絶叫すら耳に届かず、正三はふたりに斬り掛かった。


「なんという事だ!」

「え? 剣をって」


瞬時に理解した長瀬に比べ、新蔵は訳がわからず、棒立ちのままだ。


「新蔵、伏せろ!」


長瀬は新蔵に飛びついた。

彼は、咄嗟に地面に引き倒され瞬殺は逃れた。だが、鬼の声を聞いた正三の目に、彼らは敵として映っている。

正三は眼前の敵を倒すため、続けて長瀬を襲った。


「嘘だ……嘘だろ? なんで織田さんが、そんな馬鹿な……」

「正三っ! 正三……目を覚ませ。『青龍』を放せ……放すのだっ!」


長瀬も必死で応戦するが、二十年来の付き合いである正三を、敵とみなして斬ることはできない。

いや、本気で斬りかかる勇者の血を持つ剣士を……『鬼』を押さえる力量は長瀬にはなかった。


< 139 / 484 >

この作品をシェア

pagetop