弟矢 ―四神剣伝説―
「佐用辺りに罠を張り、乙矢を始末せよとのご命令ではありませぬか? 狩野様はどうなされるおつもりです?」


すぐに追撃命令が出るかと思いきや、関所で待機を命じられ狩野は面白くなかった。


一年前、あの方の命令を受け、国境で一矢を待ち伏せ襲った。確実に仕留めるため、夜明けの襲撃を企んだのだが、決行は深夜と定められる。そのせいとは言い切れないが、手ごたえがあったものの、闇に紛れ見失った直後、一矢は崖から転落、川面に消えた。

その後、狩野の報告を受け、一矢は死んだであろうから、探索は不要と言われたのだ。

一時は納得させたものの、狩野の中でずっと燻り続けている思いがある。あの方は、爾志一矢本人ではあるまいか? と。

だが、爾志兄弟が同時に姿を見せ、城にあの方はいた。

武藤には、「狩野様の考え過ぎでござろう」などと一笑に付される始末だ。


「武藤殿……確か一年前、私が一矢を襲う前に、西国の爾志一門を一掃されたのは、おぬしとあの方であったな?」

「いかにも。爾志の姫君は生かして連れ帰るつもりでござった。大変、美味な生娘でござったよ。いやいや、惜しいことをしたものだ」


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