弟矢 ―四神剣伝説―
暗いよぉ……怖いよぉ……。
おきみは膝を抱え、ギュッと目を閉じた。
数日前、突如、里が襲われ、おきみらは捕らえられた。大人たちは、神剣の勇者さまが助けに来てくれると言ったけど……。その前に、おきみの父も母も、殺された。
母が斬られた時――おきみの頭上に血の雨が降り注いだ。
おきみは、その小さな体に流れる血の一滴、肉の一片までも、搾り出すように……母を呼び、泣き叫ぶ。だが、母の首は薄皮一枚残して傾き、その目は、二度とおきみを映すことはなかった。
――ふた親ともおらんようになって、誰が面倒を見る? おまけに、口もきけんし、困ったもんだ。
これまでの里には住めなくなり、仮の里に移ってから、里人の様子が目に見えて変わり始めた。
途端にすげなく突き放され、おきみの居場所はなくなる。
高円の里に戻ろう、父や母と暮らしたあの家に。おきみは決意し、たった独り、里を出た。
(家に戻ったら、おっとうとおっかあに逢える)
そう思ったとしても、誰が責められよう。
だが、わずか五つの幼子に一里も離れた里の場所がわかるはずもない。とっぷり日も暮れ、すぐ近くで野犬の遠吠えまで聞こえ始めて、ついにおきみは、一歩も動けなくなってしまう。
(暗いよぉ、怖いよぉ……おっかあ、助けて)
おきみは膝を抱え、ギュッと目を閉じた。
数日前、突如、里が襲われ、おきみらは捕らえられた。大人たちは、神剣の勇者さまが助けに来てくれると言ったけど……。その前に、おきみの父も母も、殺された。
母が斬られた時――おきみの頭上に血の雨が降り注いだ。
おきみは、その小さな体に流れる血の一滴、肉の一片までも、搾り出すように……母を呼び、泣き叫ぶ。だが、母の首は薄皮一枚残して傾き、その目は、二度とおきみを映すことはなかった。
――ふた親ともおらんようになって、誰が面倒を見る? おまけに、口もきけんし、困ったもんだ。
これまでの里には住めなくなり、仮の里に移ってから、里人の様子が目に見えて変わり始めた。
途端にすげなく突き放され、おきみの居場所はなくなる。
高円の里に戻ろう、父や母と暮らしたあの家に。おきみは決意し、たった独り、里を出た。
(家に戻ったら、おっとうとおっかあに逢える)
そう思ったとしても、誰が責められよう。
だが、わずか五つの幼子に一里も離れた里の場所がわかるはずもない。とっぷり日も暮れ、すぐ近くで野犬の遠吠えまで聞こえ始めて、ついにおきみは、一歩も動けなくなってしまう。
(暗いよぉ、怖いよぉ……おっかあ、助けて)