スロウ・メロウ


最後の足掻きは…出来なかった。


これは俺が墓場まで持っていく一生モンの、秘密ってやつだ。


「ほら、いいから行けよ」


屋上のドアの前に立たせる。ほら、お前が笑顔になれるアイツのとこまで。


「お、終わったらまた来るから!絶対待っててよね!」

「!」


待ってて……いいのか?


変わってしまうと、もうダメかと思っていた。

俺はそんな自分の考えがアホらしくてくしゃくしゃと頭を撫でてやった。これで一番じゃねえの。


終わって、笑顔で帰ってくるはずのあおいを俺は

フェンスの上で右手を差し出して、待っててやるのが――


この関係は、変わらねえんだよな?



< 53 / 56 >

この作品をシェア

pagetop