蜜色チェーン―キミと一緒に―
『社長も俺をクビにしてくれないし』
呆れている口ぶりをしながらも、少し嬉しそうだった拓海くんの微笑みの意味が。
そして、私が『一生かけて、私を試して』って言った時に浮かべた驚いた表情の意味も。
拓海くんは、私にそう言われる少し前に、社長に同じ事を言われてたから驚いたんだ。
社長がその言葉を、私が拓海くんに言ったのと同じ気持ちで言ったなら。
拓海くんの傷が癒えるのも、無理な事じゃないように思えた。
「この歳になって殴り合うなんて恥ずかしいが、拓海の抱えている不安や傷に、少し触れられた気がしたよ。
こんな事思うのもおかしいが……殴り返してくれた拓海が嬉しかった」
「社長……」
「すべて野原さんのおかげだと思ってる。
本当にありがとう」
その後、何度も私にお礼を言う社長に困りながらも笑顔を返して、部屋を出ようとした時。
社長が「頼みがある」と切り出した。