蜜色チェーン―キミと一緒に―


「拓海の千明への嫌がらせは、八つ当たりからだって事にしておいて欲しいんだ」
「え、どうして……あ、沖田さんのために、ですか?」
「ああ。本当のところ、拓海がどんな思いでそうしていたかは、この間野原さんに聞いて十分分かっている。
しかし、それは私さえ分かっていればいい事で、第三者にまで伝える事ではない」
「そうですね……」
「拓海の生い立ちや抱えているトラウマを、例え事実だとしても、第三者に軽い気持ちで噂されるような事だけは避けたいんだ」
「……はい。私もそう思います」
「まぁ、拓海が千明にした事を知っている人間がいるのかは分からないが……。
千明もべらべらしゃべるような男ではないし。
ただ、もしも誰かがその事を話していた時、拓海のわがままだとかそういう事が理由だって事にしておいて欲しいんだ」
「わがままですか……」


私は部署が違うから、営業部の中で拓海くんがどんな態度を取っていたのかは分からない。
仕事に対して真面目な態度を取っていなかった事は、拓海くん本人から聞いていたから知っているけど。

同じ部署内で一日中一緒にいたら。
社長の言うように、拓海くんと宮坂さんの関係を不思議に思う人もいるかもしれない。
そして、拓海くんが宮坂さんに拘っていた事や、嫌がらせみたいな事をしていた事も、バレないとは言い切れない。


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