キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
「『自分のためにならないマネ』をする魔法使いはいないよ。
報酬を要求することも多いみたいだし、たぶんレイヴンにとっては利益のある行動なんじゃないかな。
自分の魔法を思いきり使ってみたいっていう魔法使いは少なくないし……それに」
キリは、黒のレイヴンが魔法使いの間で有名な理由を唇に乗せた。
「黒のレイヴンは、自らの魔法の腕前に思い上がった魔法使いや、魔法を使って威張ってる魔法使いのもとに現れて、こてんぱんにやっつけちゃうって話で有名なの。
だから、単に自分の魔法を使った腕試しが好きな人なんじゃないのかな」
キリはそう言ったが、ラグナードにはそれこそ正義の魔法使いを気取っているように思える話だった。
「そんな都合のいい魔法使いがいるなら、俺が訪ね歩いた他の魔法使いの口にまったく名前が出てこなかったのはなぜだ?」
「そりゃ、黒のレイヴンは旅の魔法使いだもん。
世界のどこにいるのかわからない人を訪ねていくなんて無理だし、レイヴンは報酬を要求するって言ったでしょ?
属性もわからないそんな魔法使いと、病や毒に冒された人たちを目にとまれば一人残らず『無償で』治療して回ってた大賢者【霧のシムノン】の知名度とじゃ、比べものにならないよ」
キリは忌々しそうにそう言った。
「それは……実はいい人なんじゃないのか?」
「エセ大賢者だよ。
あのクソジジイは、他人の毒素を吸い取ってためておいて、エスメラルダの追っ手を殺すのに使ってただけだから」
ラグナードとそんな会話をするキリを、イルムガンドルがいぶかしげに見つめて、
キリはハッとなる。
忠告を無視して、王様の前で王子様にくだけた口調でしゃべり続けていたことにようやく気がついた。
「──ということであります、殿下!」
あわてふためいて、キリがとってつけたように敬礼しながら言って、ラグナードががくっと脱力した。
「その者は……?」
女王がラグナードにたずねた。
「魔法使いということだったが──この手紙に書かれていたことがまことならば、パイロープの怪物とは天の人だったのではないか?
渡鴉の言うように、普通の魔法使いにどうこうできる相手ではなかったはずだ」
「この者は、我が国の開国の盟友ヴェズルング以来の──千年に一人の霧の魔法使いです」
と、やっとラグナードはキリを紹介した。
イルムガンドルが驚きに瞠目する。
渡鴉とやらのせいで、ドラゴンのしわざとまですでに知れわたっているのは、ラグナードにとっては計算外だった。
ジークフリートのことも協力してくれた魔法使いだとなんとかうまくごまかし、ドラゴンはレーヴァンテインで退治したということにしながら、
ラグナードは霧のシムノンのうわさを頼りにキリを見つけたことや、パイロープを奪還した経緯を国王に報告した。
報酬を要求することも多いみたいだし、たぶんレイヴンにとっては利益のある行動なんじゃないかな。
自分の魔法を思いきり使ってみたいっていう魔法使いは少なくないし……それに」
キリは、黒のレイヴンが魔法使いの間で有名な理由を唇に乗せた。
「黒のレイヴンは、自らの魔法の腕前に思い上がった魔法使いや、魔法を使って威張ってる魔法使いのもとに現れて、こてんぱんにやっつけちゃうって話で有名なの。
だから、単に自分の魔法を使った腕試しが好きな人なんじゃないのかな」
キリはそう言ったが、ラグナードにはそれこそ正義の魔法使いを気取っているように思える話だった。
「そんな都合のいい魔法使いがいるなら、俺が訪ね歩いた他の魔法使いの口にまったく名前が出てこなかったのはなぜだ?」
「そりゃ、黒のレイヴンは旅の魔法使いだもん。
世界のどこにいるのかわからない人を訪ねていくなんて無理だし、レイヴンは報酬を要求するって言ったでしょ?
属性もわからないそんな魔法使いと、病や毒に冒された人たちを目にとまれば一人残らず『無償で』治療して回ってた大賢者【霧のシムノン】の知名度とじゃ、比べものにならないよ」
キリは忌々しそうにそう言った。
「それは……実はいい人なんじゃないのか?」
「エセ大賢者だよ。
あのクソジジイは、他人の毒素を吸い取ってためておいて、エスメラルダの追っ手を殺すのに使ってただけだから」
ラグナードとそんな会話をするキリを、イルムガンドルがいぶかしげに見つめて、
キリはハッとなる。
忠告を無視して、王様の前で王子様にくだけた口調でしゃべり続けていたことにようやく気がついた。
「──ということであります、殿下!」
あわてふためいて、キリがとってつけたように敬礼しながら言って、ラグナードががくっと脱力した。
「その者は……?」
女王がラグナードにたずねた。
「魔法使いということだったが──この手紙に書かれていたことがまことならば、パイロープの怪物とは天の人だったのではないか?
渡鴉の言うように、普通の魔法使いにどうこうできる相手ではなかったはずだ」
「この者は、我が国の開国の盟友ヴェズルング以来の──千年に一人の霧の魔法使いです」
と、やっとラグナードはキリを紹介した。
イルムガンドルが驚きに瞠目する。
渡鴉とやらのせいで、ドラゴンのしわざとまですでに知れわたっているのは、ラグナードにとっては計算外だった。
ジークフリートのことも協力してくれた魔法使いだとなんとかうまくごまかし、ドラゴンはレーヴァンテインで退治したということにしながら、
ラグナードは霧のシムノンのうわさを頼りにキリを見つけたことや、パイロープを奪還した経緯を国王に報告した。