キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
キリとジークフリートが、当たり前のように首を縦に振った。
「そりゃま、やろうと思えばできるよ」
「たやすいな」
「なになに? ラグナードってば、とりこにしてほしい人でもいるの?」
「違う!」
不機嫌にどなって、
ラグナードはだまって数歩進んでから、ろうそくの灯りの中にまぬけな顔でつっ立っている二人の魔法使いをふり返った。
「……ではおまえたちなら、魔法をかけられてとりこにされている人間を見れば、わかるか?」
しぶい顔で、ラグナードはそんな質問をした。
どういう意図の問いなのかと、キリとジークフリートが首をひねった。
「うーん、どうかなあ」
「キリのように体を乗っとられて操られている人間ならば、見ればわかるけどな」
ジークフリートの言葉で嫌な記憶がよみがえり、キリがかわいい顔をしかめて「うう」とうなった。
「他人に取り入る魔法にも色々あるからな。
特定の人間の前でだけ、自分を魅力的に見せる魔法を使っているような場合は、とりこにされている人間のほうがなにか魔法をかけられているわけでもない。
判別するのはむずかしいな」
そうか、とつぶやいて、ラグナードは宙をにらむようにしてふたたび歩き出した。
「誰か、魔法使いのとりこにされてる人間がいるってこと?」
彼の背中を追いかけながらキリがたずねて、
「ああ」と、ラグナードは嫌悪をこめて吐き捨てた。
「魔法で取り入られているに決まっている……!」
断定的な言い方だった。
己自身にそう言い聞かせているような。
必死にそう信じようとしているような。
「おまえたちには、それを見極めて、彼女にかけられた魔法を解いてもらいたい」
彼女? とキリは首をかしげた。
「女の人なの?」
そうだ、と首肯して、
ラグナードは、拒絶を込めて彼に対してかたく閉ざされたかのような扉の前で足を止めた。
王族の居館と渡り廊下でつなげられたここは、
身内の女性が住む、婦人の部屋が並ぶ棟だった。
もともとキリ一人を利用する気でいたが、
パイロープでさらに強力な天空の魔法使いであるジークフリートを手に入れることができたことは、彼にとってうれしい誤算だった。
ラグナードが両開きの扉をノックする。
すぐに中から、身分の高そうなドレス姿の若い女官が顔を出した。
「殿下……!」
ブロンドの王子様の顔を見るなり、女官が息をのんで、
「俺が帰還の挨拶に来たと伝えろ」
ラグナードが女官をにらんで命じた。
「お言葉ですが、殿下」
女官は王子の命令にもすぐさま従うそぶりを見せずに、その場にとどまったままラグナードをにらみ返した。
「面会の約束がございません」
「なんだと?」
「いかな殿下と言えど、お約束もなくアンネモーナ様をお訪ねになるなど無礼ではありませんか」
この部屋にはどうやら、アンネモーナという人がいるらしい、とキリは思った。
「お引き取りを。お約束もないのに、アンネモーナ様は殿下にお会いになりませんわ。
あらためてお越しください」
つんとすまして女官がそんな門前払いの言葉を口にして、キリは少し驚いて、
見る間にラグナードが顔を怒りに紅潮させた。
「そりゃま、やろうと思えばできるよ」
「たやすいな」
「なになに? ラグナードってば、とりこにしてほしい人でもいるの?」
「違う!」
不機嫌にどなって、
ラグナードはだまって数歩進んでから、ろうそくの灯りの中にまぬけな顔でつっ立っている二人の魔法使いをふり返った。
「……ではおまえたちなら、魔法をかけられてとりこにされている人間を見れば、わかるか?」
しぶい顔で、ラグナードはそんな質問をした。
どういう意図の問いなのかと、キリとジークフリートが首をひねった。
「うーん、どうかなあ」
「キリのように体を乗っとられて操られている人間ならば、見ればわかるけどな」
ジークフリートの言葉で嫌な記憶がよみがえり、キリがかわいい顔をしかめて「うう」とうなった。
「他人に取り入る魔法にも色々あるからな。
特定の人間の前でだけ、自分を魅力的に見せる魔法を使っているような場合は、とりこにされている人間のほうがなにか魔法をかけられているわけでもない。
判別するのはむずかしいな」
そうか、とつぶやいて、ラグナードは宙をにらむようにしてふたたび歩き出した。
「誰か、魔法使いのとりこにされてる人間がいるってこと?」
彼の背中を追いかけながらキリがたずねて、
「ああ」と、ラグナードは嫌悪をこめて吐き捨てた。
「魔法で取り入られているに決まっている……!」
断定的な言い方だった。
己自身にそう言い聞かせているような。
必死にそう信じようとしているような。
「おまえたちには、それを見極めて、彼女にかけられた魔法を解いてもらいたい」
彼女? とキリは首をかしげた。
「女の人なの?」
そうだ、と首肯して、
ラグナードは、拒絶を込めて彼に対してかたく閉ざされたかのような扉の前で足を止めた。
王族の居館と渡り廊下でつなげられたここは、
身内の女性が住む、婦人の部屋が並ぶ棟だった。
もともとキリ一人を利用する気でいたが、
パイロープでさらに強力な天空の魔法使いであるジークフリートを手に入れることができたことは、彼にとってうれしい誤算だった。
ラグナードが両開きの扉をノックする。
すぐに中から、身分の高そうなドレス姿の若い女官が顔を出した。
「殿下……!」
ブロンドの王子様の顔を見るなり、女官が息をのんで、
「俺が帰還の挨拶に来たと伝えろ」
ラグナードが女官をにらんで命じた。
「お言葉ですが、殿下」
女官は王子の命令にもすぐさま従うそぶりを見せずに、その場にとどまったままラグナードをにらみ返した。
「面会の約束がございません」
「なんだと?」
「いかな殿下と言えど、お約束もなくアンネモーナ様をお訪ねになるなど無礼ではありませんか」
この部屋にはどうやら、アンネモーナという人がいるらしい、とキリは思った。
「お引き取りを。お約束もないのに、アンネモーナ様は殿下にお会いになりませんわ。
あらためてお越しください」
つんとすまして女官がそんな門前払いの言葉を口にして、キリは少し驚いて、
見る間にラグナードが顔を怒りに紅潮させた。