キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
「全員が……」
今度はラグナードが言おうか言うまいか逡巡(しゅんじゅん)して、
「全員が、十九歳だ」
と異様なその事実を口にした。
「えっ……?」
キリは思わず耳を疑う。
「俺と同じ──な」
ラグナードが自嘲的に笑って言った。
貴族の姫君とはそういうものなのか──キリがこれまで目にしてきた町や村の十九歳の娘よりも、女官たちは若く見えた。
だからキリと同じくらいか、ジークフリートの見た目くらいの少女たちかと思っていたのだが──
どういうことなのだろう、とキリはまたうすら寒いものを感じた。
第二大陸の季節は夏に向かっていたが、キリはぶるっと小さく身震いする。
「そして、全員が赤毛だ」
ラグナードがつけ加えて、
「あっ」とキリは声を上げた。
娘たちの髪の色もまた、異様さに拍車をかけていたのだ。
言われてみれば確かに、女官たちは全員が赤い髪をしていた。
あの執務室で見た国王のような。
キリは、ラグナードのブロンドに視線を送った。
「なんで赤い髪ばっかり……?」
「まあ、ガルナティスは赤毛の人間が多いが──」
ラグナードは氷雨のように笑った。
「母上は俺のこの容姿が、よほどお嫌いなんだろうさ」
悲痛な笑いだった。
ジークフリートが無表情なまま、混乱したように、
「地上の人には、ときに妙な性癖を持つ者がいるというが、そういうことか?」
と口走った。
「ふざけるな!」
ラグナードが激昂して、
「母上はただ──あの女どもと一緒に過ごしているだけだ」
後半は力なくつぶやいた。
「そんなの……」
キリはしょんぼりと肩を落とした。
「おかしいよ。どうして自分の子供じゃなくて、ほかの女の子と一緒にいるの」
キリが思い描いていた母親や家族というものと、それはあまりに違っていた。
「ラグナードのお母さんなのに……」
これも誰かに取り入られているせいなのだろうか。
記憶のすみにぼんやりと、自分が白い魔法使いにエスメラルダに連れてこられた日のことがよぎって、
キリのほおをたたいて、俺の家族に無礼は許さないと言ったラグナードと、
そのラグナードに、殺されてしまえばよかったと告げたアンネモーナの姿が
キリにはあまりにも悲しかった。
ラグナードがふたたび歩き出して、
「ラグナードはあのお姉さんと、お母さんと、三人家族?」
父親は死んでしまったという話を思い出しながら、キリはたずねた。
「いや」
ラグナードは首を横に振って、
「妹が一人と、まだ上に三人兄姉がいる」
「ええっ?」
キリはびっくりした。
「六人兄弟!? 王族って、そんなにたくさん兄弟がいるものなの!?」
「ああ──」
ラグナードの横顔が少し苦笑した。
「母上は後妻として王宮に入ったんだ。
俺と妹とは母上の子だが、国王陛下や他の兄上と姉上は先妻の子だ。
おまえの言ったように、国王陛下から見れば母上は継母ということになるな」
「えーと、つまり父親は同じで、王様とラグナードは異母姉弟ってこと?」
「そうだ」
なるほど、とキリは思って、
それから首をかしげた。
「他にお兄さんやお姉さんが三人もいるなら、普通は年長の人が皇太子になるもんじゃないの?」
今度はラグナードが言おうか言うまいか逡巡(しゅんじゅん)して、
「全員が、十九歳だ」
と異様なその事実を口にした。
「えっ……?」
キリは思わず耳を疑う。
「俺と同じ──な」
ラグナードが自嘲的に笑って言った。
貴族の姫君とはそういうものなのか──キリがこれまで目にしてきた町や村の十九歳の娘よりも、女官たちは若く見えた。
だからキリと同じくらいか、ジークフリートの見た目くらいの少女たちかと思っていたのだが──
どういうことなのだろう、とキリはまたうすら寒いものを感じた。
第二大陸の季節は夏に向かっていたが、キリはぶるっと小さく身震いする。
「そして、全員が赤毛だ」
ラグナードがつけ加えて、
「あっ」とキリは声を上げた。
娘たちの髪の色もまた、異様さに拍車をかけていたのだ。
言われてみれば確かに、女官たちは全員が赤い髪をしていた。
あの執務室で見た国王のような。
キリは、ラグナードのブロンドに視線を送った。
「なんで赤い髪ばっかり……?」
「まあ、ガルナティスは赤毛の人間が多いが──」
ラグナードは氷雨のように笑った。
「母上は俺のこの容姿が、よほどお嫌いなんだろうさ」
悲痛な笑いだった。
ジークフリートが無表情なまま、混乱したように、
「地上の人には、ときに妙な性癖を持つ者がいるというが、そういうことか?」
と口走った。
「ふざけるな!」
ラグナードが激昂して、
「母上はただ──あの女どもと一緒に過ごしているだけだ」
後半は力なくつぶやいた。
「そんなの……」
キリはしょんぼりと肩を落とした。
「おかしいよ。どうして自分の子供じゃなくて、ほかの女の子と一緒にいるの」
キリが思い描いていた母親や家族というものと、それはあまりに違っていた。
「ラグナードのお母さんなのに……」
これも誰かに取り入られているせいなのだろうか。
記憶のすみにぼんやりと、自分が白い魔法使いにエスメラルダに連れてこられた日のことがよぎって、
キリのほおをたたいて、俺の家族に無礼は許さないと言ったラグナードと、
そのラグナードに、殺されてしまえばよかったと告げたアンネモーナの姿が
キリにはあまりにも悲しかった。
ラグナードがふたたび歩き出して、
「ラグナードはあのお姉さんと、お母さんと、三人家族?」
父親は死んでしまったという話を思い出しながら、キリはたずねた。
「いや」
ラグナードは首を横に振って、
「妹が一人と、まだ上に三人兄姉がいる」
「ええっ?」
キリはびっくりした。
「六人兄弟!? 王族って、そんなにたくさん兄弟がいるものなの!?」
「ああ──」
ラグナードの横顔が少し苦笑した。
「母上は後妻として王宮に入ったんだ。
俺と妹とは母上の子だが、国王陛下や他の兄上と姉上は先妻の子だ。
おまえの言ったように、国王陛下から見れば母上は継母ということになるな」
「えーと、つまり父親は同じで、王様とラグナードは異母姉弟ってこと?」
「そうだ」
なるほど、とキリは思って、
それから首をかしげた。
「他にお兄さんやお姉さんが三人もいるなら、普通は年長の人が皇太子になるもんじゃないの?」