キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
「無論、三人とも二十歳になる年の新年に、皇太子の話があった」
ラグナードはあっさりとうなずいてから、
「だが、三人がそろって王位継承権を放棄して皇太子となることを辞退したからな」
と言った。
「えええ!?」
キリは思わず声を上げる。
「三人が三人とも?」
「三人が三人ともだ」
目をしばたたいて、キリは絶句した。
「兄上も姉上も、すでに王家の人間ではなく臣下の身分に下っている」
「なんで!?」
キリには理解できない話だった。
「だって王様になれるんでしょ? そんなの放棄する人がいるの!? っていうか、放棄できちゃうものなの!?」
「皇太子の辞退はできるさ。その時点で臣下となるが……」
「天と地の差じゃん!」
将来、王様になることを保証された身分と、臣下──つまりは家来になるということでは雲泥の差だ。
「まあ、俺のすぐ上の兄と姉は変わり者だったからな」
と言って、ラグナードは肩をすくめた。
「二人とも今年で二十五歳の双子で、魔法使いだ」
「え?」
「姉上は皇太子を辞退して宮廷魔術師になったが、一日中研究室に閉じこもって出てこない。
兄上のほうは、『死んだと思ってくれ』と言い残して国を出てから行方不明だ。
たまに双子の姉上には魔法使いとして情報交換の手紙をよこしているから、生きてはいるようだが。
姉上によると、世界中を放浪しているらしいな」
ラグナード以上につき抜けた兄姉である。
「確かに変わってる……」
「……お前に言われたらおしまいだな」
ラグナードが鼻を鳴らした。
キリはラグナードにそう言われるのもおしまいだという気がした。
「魔法使いとして情報交換してるってことは、二人とも同じ属性?」
双子の魔法使いの属性は同じ場合が多い。
キリの質問にラグナードは首肯して、
「さすがによくわかるな。二人とも『炎』の属性だ」
と答えた。
「炎!?」
ラグナードの口からさらっと飛び出した属性を聞いて、キリはあんぐりと口を開けた。
そう言えば、とラグナードが考えこむ。
「ガルナティス王家からはたまに魔法使いが生まれることがあるが、過去の記録でもすべて火炎系の魔法使いだったそうだ。なぜだろうな……」
「って、そんなことどうでもいいよ!
火炎って言ったら一番攻撃に特化した魔法使いだよ!?
お兄さんは行方不明でも、そんな宮廷魔術師のお姉さんがいるなら、わたしのとこまで来る必要なんかなかったんじゃないの!?」
すると、
ラグナードは複雑な表情になった。
「彼女の師匠だった炎の宮廷魔術師が先遣隊の中にいたんだ」
「え……」
「もともとパイロープは火の土地だし、氷との相性を考えても、火炎系の属性を持つ魔法使いが行くべきだという話は、当然宮廷魔術師の間からも出たさ。
彼は宮廷魔術師としては姉上よりはるかに優秀で、兵の信望も厚く戦場での経験も豊富な軍人だったが……結果、戻らなかった」
ラグナードは、背後の天の人をふり返り、にらんだ。
「おまえに殺されたんだろう」
ラグナードはあっさりとうなずいてから、
「だが、三人がそろって王位継承権を放棄して皇太子となることを辞退したからな」
と言った。
「えええ!?」
キリは思わず声を上げる。
「三人が三人とも?」
「三人が三人ともだ」
目をしばたたいて、キリは絶句した。
「兄上も姉上も、すでに王家の人間ではなく臣下の身分に下っている」
「なんで!?」
キリには理解できない話だった。
「だって王様になれるんでしょ? そんなの放棄する人がいるの!? っていうか、放棄できちゃうものなの!?」
「皇太子の辞退はできるさ。その時点で臣下となるが……」
「天と地の差じゃん!」
将来、王様になることを保証された身分と、臣下──つまりは家来になるということでは雲泥の差だ。
「まあ、俺のすぐ上の兄と姉は変わり者だったからな」
と言って、ラグナードは肩をすくめた。
「二人とも今年で二十五歳の双子で、魔法使いだ」
「え?」
「姉上は皇太子を辞退して宮廷魔術師になったが、一日中研究室に閉じこもって出てこない。
兄上のほうは、『死んだと思ってくれ』と言い残して国を出てから行方不明だ。
たまに双子の姉上には魔法使いとして情報交換の手紙をよこしているから、生きてはいるようだが。
姉上によると、世界中を放浪しているらしいな」
ラグナード以上につき抜けた兄姉である。
「確かに変わってる……」
「……お前に言われたらおしまいだな」
ラグナードが鼻を鳴らした。
キリはラグナードにそう言われるのもおしまいだという気がした。
「魔法使いとして情報交換してるってことは、二人とも同じ属性?」
双子の魔法使いの属性は同じ場合が多い。
キリの質問にラグナードは首肯して、
「さすがによくわかるな。二人とも『炎』の属性だ」
と答えた。
「炎!?」
ラグナードの口からさらっと飛び出した属性を聞いて、キリはあんぐりと口を開けた。
そう言えば、とラグナードが考えこむ。
「ガルナティス王家からはたまに魔法使いが生まれることがあるが、過去の記録でもすべて火炎系の魔法使いだったそうだ。なぜだろうな……」
「って、そんなことどうでもいいよ!
火炎って言ったら一番攻撃に特化した魔法使いだよ!?
お兄さんは行方不明でも、そんな宮廷魔術師のお姉さんがいるなら、わたしのとこまで来る必要なんかなかったんじゃないの!?」
すると、
ラグナードは複雑な表情になった。
「彼女の師匠だった炎の宮廷魔術師が先遣隊の中にいたんだ」
「え……」
「もともとパイロープは火の土地だし、氷との相性を考えても、火炎系の属性を持つ魔法使いが行くべきだという話は、当然宮廷魔術師の間からも出たさ。
彼は宮廷魔術師としては姉上よりはるかに優秀で、兵の信望も厚く戦場での経験も豊富な軍人だったが……結果、戻らなかった」
ラグナードは、背後の天の人をふり返り、にらんだ。
「おまえに殺されたんだろう」