始末屋 妖幻堂
第十章
 さてそんな狐姫の呪いを受けつつ、千之助は日が昇ると、さっさと寝床を抜け出し、調査を開始した。

 まずは早々に村長に挨拶。
 そのまま朝餉を共にし、その状況で聞き込みに入ることにした。

「よく眠れましたかな? 都とは違い、静かでしょうから、日頃の疲れも取れましょう」

「ええまぁ。温泉もありますし、良いところですね」

 よく眠れるも何も、夕べは冴が忍んできたお陰で、寝床を奪われてしまった。
 もっとも千之助は、ヒトのように睡眠が必要なわけではないので、そんなことはどうでもいいのだが。

 ちなみに冴は、いまだ昏々と眠り続けている。

---ちょいと香がきつかったかな? けど、とっとと起き出してこられても、冴がいちゃやりにくいしな---

 どうせ起き出したら、またぞろ千之助にべったりだろう。
 あまりまとわりつかれては、調査もままならない。

---ま、あいつもこの村の娘だ。そのうち役に立とうさ---

 冴のことは置いておいて、千之助は室内をぐるっと見渡した。
 今は里は部屋の中にはいないが、女中と一緒に出たり入ったりしている。
 朝は何かと忙しいようだ。
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