始末屋 妖幻堂
「お若いお内儀なのに、よぅ働きますな」

 千之助の言葉に、長は満足そうに頷いた。

「ほんに、よぅやってくれております。あれは、つい二年ほど前に迎えた妻なのですがね。このような老いぼれの相手も、嫌な顔せずよぅ仕えてくれます」

 二年前---。
 千之助は食後の水菓子を持ってきた里を見た。
 長と千之助の前に水菓子を置き、一礼してさがっていく。

「なるほど、それで。お冴さんの母親にしちゃ、お若いと思っておりました。羨ましいですな」

「いや、お恥ずかしい。冴も初めはなかなか打ち解けてくれなかったんですがね。最近は、仲良うやってくれております」

「女子は難しゅうございますからな」

 軽く言った千之助に、長が笑いかけたとき、里が入ってきた。

「ろくろくお相手も出来ず、申し訳ありませぬ」

「お気になさらず。大変ですな、お女中も一人では、この広い屋敷では、お寂しいのでは?」
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