始末屋 妖幻堂
 じゃれ合いながら待ち合わせの樫の木の傍まで来た千之助は、ふと足を止めた。
 一瞬で、千之助の目が鋭くなる。

「ち。やっぱ目立つところに出しちゃ駄目な野郎だったようだな」

 視線の先では、佐吉が数人の男に囲まれている。
 男どもにも佐吉は何らかの鍵らしく、すぐに殺しにかかる気はないらしい。

 が、あまり余裕はないようだ。
 男らはそれぞれ、腰に匕首を差している。
 今にも抜きそうな雰囲気だ。

「狐姫、危ねぇぜ」

 千之助は軽く手を振って、肩にいた狐姫を地面に下ろした。

『旦さん、大丈夫なんかい?』

「俺っちが、あんな輩にやられるとでも思ってんのかい?」

 心配そうな狐姫に、千之助は問い返した。
 そして、そのまま樫の木に近づいていく。

「おいおっさん。そいつぁ俺っちと待ち合わせてんだぜ? 用があんなら、こっちが終わってからにしてくれや」

 佐吉を取り巻く男らに向かって、千之助は声をかけた。
 それに、皆振り向く。

「・・・・・・何だぁ、お前は」

 男は三人。
 背の高い狡猾そうな男と、頭から頭巾を被った小さな男。
 今一人が、佐吉の胸倉を掴んでいる。
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