始末屋 妖幻堂
「お主が言うたではないか。死体の始末が厄介だとな。あそこで男どもを殺してしまえば、前と同じことが起こるではないか」

 以前妖幻堂が襲われたとき、殺した男衆の死体は九郎助に頼んで始末してもらった。
 今はその九郎助が、頼める状態ではないということだろう。

『へぇ、珍しい。あんたもそんなところまで考えて行動することもできるんだね』

 少し感心しつつ、だがやはり若干馬鹿にしたように、狐姫が言う。
 呶々女は後ろから、両手で牙呪丸の頭をわしわしと撫でた。

「偉いじゃないか。うんうん、良くやったよ」

 僅かに、牙呪丸の口角が上がる。
 他の者には良いことにも悪いことにも、何の反応も見事なまでに示さないのに、呶々女がちょっと褒めただけで、能面が崩れる。
 あからさまなことこの上ない。

「そんで今、地下に小菊が連れ込まれてるんだな? おさんもか?」

 唯一まともに今の状況を考えていた千之助が、呶々女に問う。

「うん。小菊だっけ? 遊女を連れて帰ってきてすぐ、あたしにいろいろ持ってくるよう言いつけたもの」

「いろいろ?」

「水とか布とか。あとは荒縄とかね」

 千之助の顔がしかめられる。
 前半部分はともかく、後半は折檻道具ではないか。
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