始末屋 妖幻堂
「・・・・・・まぁ逃げたんだから、ある程度の折檻は仕方ねぇわな。九郎助は、まだそこに入り込んでねぇのかな」

 奥に進むほど、妖気は強くなるが、妖狐二匹分もの凄まじさは感じられない。
 大人しくしていれば、この程度かもしれないが、九郎助も一緒にいれば、またおさんとの乱闘は必至だ。
 そうなれば、放出される妖気は、生半可なものではない。

「どうかなぁ。でも帰ってきたときは、おさんだけだったよ。あとは男衆。九郎様は、いなかった」

 首を捻りながら言う呶々女に、千之助は頷いた。

「どっかに潜んでるのかもしれねぇな。とりあえず、今はまず小菊よりも小太だ。呶々女、蔵に連れて行ってくれ」

「あいよ」

 馬よろしく乗っている牙呪丸を操り、呶々女は廊下を左に折れた。
 またもや長い廊下を渡ると、台所に出る。
 その先の薄い戸は、裏手の庭にでも繋がっているのだろう。

「な、何だい、あんたら」

 遊女らの夕餉を作っていた下働きの女が二、三人、驚いた様子で、飛び込んできた千之助らを見て声を上げる。
 素早く千之助の肩の狐姫が、喉の奥から吠えた。
 女たちは、耳を押さえて蹲る。

「堪忍」

 呟き、そのまま台所を駆け抜ける。
 戸を引き開けると、思った通り見世の裏手で、小さな庭を挟んで蔵が建っていた。
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