やっぱり、好きだ。

 唇を離すと、

 「・・・自分の事を好きじゃない人とのキスで、こんなにあったかい気持ちになったのは初めてだ」

 桜井先生が悲しそうに笑った。

 「・・・じゃあ、もう1回しよう」

 「・・・え??」

  桜井先生の返事も聞かないまま、自分の唇を押し当てた。

 その後も『もう1回』『もう1回』と何度もキスをせがむと『いいよ』と桜井先生は俺の頬を撫でた。

 俺は何がしたかったのだろう。

 桜井先生を慰めたかった?? 俺のキスで??

 俺、どんだけ傲慢なの??

  -----イヤ、違う。

 俺の傷を舐めて欲しかったんだ。

 俺が桜井先生の気持ちを汲めるとしたら、桜井先生だって・・・そう思ったんだ。

 俺は、桜井先生を利用したんだ。

 俺、最低だ。
< 328 / 353 >

この作品をシェア

pagetop