三毛猫レクイエム。
「うん?」
「だって、自分がいなくなっても、私達がちゃんと歩いていけるって勘違いしてたんだもん」
「真子さん……?」
なんだか、無性におかしくなってきて、私は声を上げて笑った。
「見てみなよ。私も、ヒロも、あきのこと忘れられてない。あきは自分の存在見くびりすぎだよね!」
私の言葉に、ヒロも笑って、
「確かに、自分の存在の大きさとか影響力とか、なんもわかってなかった気がする」
「あきってちょっと鈍感だったから」
「そうそう、硬派とか堅物とか言われてたけど、結局のところただ鈍感だったんだよな」
「わかる!」
私の勢いに、ヨシが驚いてびくりと体をこわばらせた。
「あ、ヨシ、ごめんね」
みゃあ
目を細めて鳴くヨシは、本当に人間の言葉がわかってるみたいで、おかしかった。
「この子、凄く頭いいんだね」
私の言葉に、ヒロは頷いて、
「それに、オスの三毛は珍しいしな。こいつ存在自体が珍獣なのかも」
「珍獣って」
ヒロの言葉の選び方に、いちいち笑ってしまう。そんな私の笑顔を見たヒロが、ヨシと同じように目を細めた。
あきに置いていかれてから、こんな風に笑えていなかった気がする。
ヒロは、あきの友達だっただけあって、似たような独特の雰囲気を持っていてどきりとする。
そして、ヒロとあきの話をしていると、今でもあきが隣にいて、やきもちを焼いて、私達に文句を言うんじゃないかという錯覚を覚えた。
それくらいあきのことを、笑顔で思い出せた。