三毛猫レクイエム。


 翌日、あきに付き添って病院に行った。あきは骨が痛いとかも言っていたから、もしかしたらインフルエンザかもしれないと思っていた。
 内科で診察を受けていると、医師があきの腕のあざに気がついた。

「ちょっと見せてください」
「?」

 あきが袖をまくると、そこにはいくつかあざがあった。

「あれ、いつの間にできたんだろう?」

 と、首をひねっているあき。対して、医師の表情が少し険しくなった。

「歯茎からの出血はないですか? あと、鼻血とか」
「あ、昨日、鼻血出ました」
「ちょっと、血液検査しましょうね」
「はい」

 私の目の前で、あきの血液が抜かれる。

「検査結果が出るまで、待合室でお待ちください」


 待合室に戻った私達は、そろって首をかしげていた。

「なんか、怖い病気なのかな?」
「そんな怖いこと言わないでよ……」

 こともなげに冗談を言うあきに、私は顔をしかめた。嫌な、予感がしていた。

「真子?」
「え、何?」

 あきは眉をひそめて、

「怖い顔してる」

 そんなことを言う。私は無理やりに微笑んで、

「ごめん。ちょっと考え事してた」

 しばらくすると、あきの名前が呼ばれた。診察室に入る際、私は看護師に呼び止められた。

「ご家族の方ですか?」
「あ、えっと……」
「家族になる予定なんです」
「そうですか。お入りください」

 あきの言葉に、どきりとしながらも、私達は一緒に診察室に入った。

「どうぞお座りください」

 用意された椅子に座って、私達は医師の言葉を待った。

「滝沢さん」
「はい」
「血液検査の結果、白血球の数が標準より多く、血小板の数値が低いです」

 あきが、顔をしかめた。
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