一億よりも、一秒よりも。
三つ、駅を通り越して、目的の駅名がアナウンスされる。
反対側のドアから外へ飛び出し、改札を抜ける。
もうここまで来て今更進路を変えるわけにもいかない。いや、変える気はない。
駅から細い道を抜け、川へと向かう。
 
急げ、たぶんまだ、間に合うはずだ。
 
耳に接続されたイヤホンからは、まだビートルズが流れていた。
その歌を声にせず口ずさみながら足を動かす。

やがて見えてくる、黄色の塊。
それは、夕凪の風に優しく揺れていた。

 
ここにいることに、運命とか必然とかの言葉は似合わない。
俺は自分の意思でここに来たのだから、これは神様の意思でも啓示でもない。
 
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