ライアーライフスタイル
店を出て、駅までの道を話しながらゆっくり歩く。
人気の少ない裏通りを選んだのは、お互いの声が聞こえやすい環境を望んだからだろう。
「お前さぁ、俺のどこが気に入らないわけ」
舟木はきっと自分に非があると思っているのだろう。
だから私が首を縦に振らないのだと。
「気に入らないところなんてないよ」
私がそう答えると、舟木は納得の行かなそうな顔をした。
『相手のためを思って騙すという方法もあるんですね』
山村の言葉がよぎる。
私が今しようとしていることは、そういうことだ。
私の8割は嘘でできている。
だけど嘘は悪いものばかりではない。
だからどうか信じてほしい。
「私ね、きっと男の人を好きになれない体質なの」
「体質? 女が好きなのか?」
「そうかもしれない」
彼の顔が強張る。
いいように勘違いしてくれればいい。