中指斬残、捌断ち儀


「……、渉。この家は、喜美子というお前の伯母さんの持ち家なのか」


階段を上る五十鈴さんは息切れなしに聞いてきた。


「うん。オバさんのいえ。イスズさんは、オバさんしっているの?」


僕のことについてはいくつか教えていたため、親と離れて、今は伯母さんと住んでいることも話したが、喜美子という名前は教えてない。そこを突いた僕に、五十鈴さんは少し間を置いたあとに答えた。


「春夏秋冬(ひととせ)だなんて珍しい姓だからな、そんな風変わりな姓を持つ女がだいぶ前からここいらに住んでいるとは頭にあったが……、ここだったのか」


最後の文は、感心にも脱力にも聞こえた。


知らなかったことを初めて知り、知らないわけを仕方がないと言いたげな口振りだ。


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