中指斬残、捌断ち儀


『ししおどし』までは響かないにせよ、石畳を鳴らすにはずいぶんと小粋な音に思えた。


視界の壁となっていた絵を膝上に置けば、参道を歩いてこちらに向かう人を見る。


かこん、かこん。
愉快な音を出す足元は、やけに高さがある下駄だった。


芸者が履いて都を歩くような靴。下駄と言ったが、よくイメージする底に二枚の歯がついたものではなく、漆塗りの厚底。歩く度に鳴る音からぽっくり下駄と呼ばれるそうで、赤い鼻緒もさることながら、その履き物を履くべき性別は女性であるべきなのに。


歩いていたのは、紛れもない男だった。


ぽっくり下駄を履くことに合わせたか、灰色袴に着物。黒の羽織の袖には金魚が泳いでいる。


和服なのが似合う男だけど、見るからに暑苦しい。自分で切ったかのような、ちぐはぐな長さの髪も見ていて鬱陶しそうにも思え、よくあれで涼しげでいられると思った。


< 298 / 1,127 >

この作品をシェア

pagetop