中指斬残、捌断ち儀


男は何が楽しいのか、口元を歪ませていた。


歯を剥き出しに、やけに尖った歯がきししと軋んでいるようにも見える。


和装であることも十分な変わり者なのに、僕の印象は男の目元に持っていかれた。


白いガーゼ。幾重にも巻かれた包帯が、男の目元を隠す。


前が見えているのかと思ったが、ぽっくり下駄で参道の真ん中を歩く辺り、視界は良好と窺える。


何か目に怪我でもしているのか?と思えど、男の風体というのは僕の警戒心をささくれさせた。


もはや、危険人物の看板をつけて歩いているような格好の男でも――僕は何よりも、“この家に来客があることの方に、鼓動を早めていた”。


住んでから四年。
一度たりとも来客などない。五十鈴さんは僕を送り届けてくれたにせよ、訪問予定もない客は初めてだ。


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