中指斬残、捌断ち儀
バケツに水と柄杓を入れた伯母さんが僕の前に立つ。
ぶつぶつとお経めいたものを暗唱したあとに。
「事此処に我等が頭之神冠様の幸光が導授の路にならんことを」
お辞儀を加えたような含みある声でしめたあと、水がかけられた。
青臭さがひどいのは昔からだけど、調合の比率でも変えたのか薬品の匂いを強く感じた。
理科室の匂いだ、と頭の隅で考えて、今日は休みで良かったと安心していた。
匂いがひどい水を落とすには、一度お風呂に入らなきゃならない。
伯母さんの“浄め儀”は予測がつかないために、学校を行く前にいきなりということもあり、僕にとっては『一番に“浄め儀”を受けたくない時』に格付けされている。
匂いを落とすために風呂に入れば、確実に遅刻をするからだ。だから、休日の今日は『いくらでもお付き合いします』ほどの心構えでもあった。