中指斬残、捌断ち儀


「ちぃっ……!」


地に這いつくばり、涙で懇願する女はこの上なく惨めで痛ましく思えた。


気丈な五十鈴とはまったくの別人のよう。見たくはなかった姿、幻滅してもいい弱さなど拝みたくはなかった。


「渉、わたっ……」


渉の足が縊びり縄への階段(道)を踏んだ。


「私が代わるっ、私が代わるから、だから、渉に何もしないで!」


「ちっくしょうがあぁ!」


胸くそ悪すぎると、藤馬の右手が僅かに動く。


「泣くな、喚くな、んな顔すんじゃねえぇっ!てめえも、ガキも、俺の許可なしにビービー騒ぐな、耳障りなんだよ、気分わりぃっ。俺が――俺が連れて帰ってやっから、黙って大人しくしてろ!」


欠けた歯ごと唾を吐き出す。


呪いのしっぺ返しの効力は薄くなってきたのが幸いし、あと数秒で全快へと向かうことだろう。


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