中指斬残、捌断ち儀
そんな地獄の中、唯一生き残っていたのは件の赤子。
相変わらず泣き声はあげないが、乳を探すかのように手を忙しなく動かしていた。
『鬼子』だと父親は叫ぶ。逃げようとしたが、抜かした腰が思うように動かず――見て、しまった。
赤子特有の大きな目を。開くにはまだ先であろう開化――おぞましい眼と目を合わせるなり、父親もまた発狂して、地面に頭を叩きつけた。
がんがん、と地面が負けて凹むほどに。それでも『死ねない』と父親は近場にあった鍬を手にして、それを頭に振り下ろした。
絶命は一瞬。
火事場の馬鹿力以上に鬼気迫る自害は盛大に、血の花を咲かしてみせた。