ONLOOKER Ⅳ
「ねぇ、やっぱり職員室行くより先に、警察呼んだ方がよかったんじゃないかな」
コウキが、狼狽えた声を出す。
口を動かしていないと落ち着かないのか、さっきから沈黙に耐えかねると、ぽつりと意味のないことを呟いたりしているのだ。
ナツが、眉を顰めて言った。
「いや……まずは理事長の指示を扇いだほうが」
「そんなこと言ってる問題!? 人が死んでるのに!」
「だからだよ」
おろおろしっぱなしのコウキとは対照的に、ナツとマサトは冷静だった。
今にも泣きそうな友人の表情を見て、苦い顔をしたナツの代わりに、マサトが言う。
「校内で人が死んだんですよ。事故じゃなかったら大問題です」
「……どういう意味?」
「もし、自殺や殺人だったら。責任を問われるのは学校側ですよ」
コウキも思わず、黙り込む。
つまりは、ここに死体があるというのに、学校側の保身のために、もしかしたら真相を葬る場合もある、ということだ。
いくらいがみ合っていた竹田でも、そんなのはあんまりだ、と思ったのだろうか。
彼はそういう、良く言えば心優しい――悪く言えば甘い――人間なのだ。
その時、沈黙を破るように、部室の外から、ばたばたと足音が聞こえてきた。