ONLOOKER Ⅳ
それぞれが正反対と言えるほどの変身を遂げた中で、素人である夏生、紅、直姫の三人が演じる役柄は、今のところたいした意外性も持ち合わせていない。
「紅はそのままが一番なんですぅー」
「あーはいはい」
「いやでも、素人三人はキャラ変更なしとか言ってっけどさ……夏生と直姫は、ねぇ?」
「……なに?」
「表向きにはいつもと変わんないかもだけど」
「結局はがっつり演技してるにょろ、お二人」
「しょうがないでしょ。ぜひそのままでおねがいします、って言われたんだから」
「ま、そーだよねぇ。さすがに夏生はキャラ崩せないか」
直姫がそれなりに演技をこなせるのは、クラス親睦会の演劇で実証済みだ。
だからか、いつもよりは少し頼りない性格に設定されている。
問題は全くの未知数である夏生と紅だが、校内での二人の人気は桁外れで、下手にキャラを崩してファンの不評を買っては映研部の今後に関わる、ということらしい。
そのため、ほぼ普段の二人に似せた役柄にしてあるはずなのだが、実際は日常的に巨大な猫を被っている夏生だ。
結局恋宵の言うように、なんだったら一番ギャップを演じている夏生なのだった。