ONLOOKER Ⅳ
突然マサトに呼ばれたコウキが、びくりと肩を揺らす。
この中で、多少なりとも医学の知識があるのは、悠綺大学の医学部を目指している、彼だけだ。
「あ、うん……」
「コウキ先輩、見てもらえますか?」
「ぼ、僕が?」
「他に誰がいるんですか」
「……そう、だよね」
相変わらず蒼白だが、自分がしっかりしなくては、と思い直したのか、いくらか落ち着いた表情で、頷く。
白いシーツから覗く血痕を踏まないように注意深く近寄って、死体のそばに屈み込んだ。
「あの、見たくない人は、下がってた方が」
シーツに手をかけてから、一度躊躇して、コウキが言った。
ナオ、ヨリコと見回して、最後にユカリと、目が合う。
「……私は、大丈夫」
ユカリが言う。
それは彼らが、少しずつこの状況を受け入れはじめた瞬間だった。