ONLOOKER Ⅳ



「頭に大きな傷がある。他に外傷はないし、たぶんこれが死因だと思っていい、かな……詳しいことは、病院で調べてみないと」
「そんだけわかりゃ十分だろ」

そう言ったシュンの目線は、床に落ちた花瓶にあった。
最初に竹田の死体を発見した時から、誰もが気になってはいたものだ。
生け花の実力者であるユカリが部室に置いているもので、いつも見事な作品が生けられていた。
それが、中身を床にぶちまけられ、竹田の血に濡れた床に転がっていたのだ。

「この花瓶で間違いねーだろうな。血もべっとりついてるし」
「どうして花瓶を……花を見てたんでしょうか」
「竹田が?」

マサトが、眉を寄せる。
何を言わんとしているのかは、すぐにわかる。

竹田は、ユカリの花を見事だと思うような、そんな感性の持ち主ではないだろう、ということだ。
ナツは腕を組んで、水と血の混ざった、まだ乾かない床を見た。



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