ONLOOKER Ⅳ
花瓶の中身は、ユカリの生けた花。
華道の家元の娘である彼女の腕前は校内でも評判で、三日に一度ほど入れ換えられるそれを、わざわざ見に来る人もいたくらいだ。
だが部室は原則部員以外立ち入り禁止なため、台ごと廊下に出しておくこともあった。
「花瓶に触ってく人も、沢山いましたよね……」
「じゃあ……あの花瓶を取っておいて後で警察に渡しても、指紋で犯人が誰かは特定できない、ってこと……?」
「そうなるね」
ヨリコが、疲れた顔で、溜め息を吐く。
やっと泣き止みはしたようだが、そのせいで気力と同時に体力まで消耗してしまったようだ。
「ねぇ、じゃあもし、俺たちの他に、ここにまだ人がいたら……」
「竹田を殺した犯人かも、ですね」
息を飲んだのは、コウキだけではなかった。