ONLOOKER Ⅳ


――怖い。

それも当然だ、自分たちの使い慣れた部室で、殺人事件が起きたのだ。
さっきまではそんなこと考えもしなかったから、コウキが死体を調べる時だって、その場を離れずにいられた。

再び泣き出しそうになったヨリコの肩に置こうとした手を、コウキははっと引っ込めた。
丁寧に洗いはしたが、竹田の血に触れた手だ。
血液というのは、なんだかそう簡単に落ちるものではない気がする。

「どうしますか、ナツ先輩……やっぱり、見回りに?」
「あぁ、行くしか……全員でここにいてもしょうがないし、なにかしないと」
「ここにある花瓶を使ったってことは、凶器を持ってたりするわけじゃないかもしれない。それに、俺たちがいることに気付いて、出口を塞いだのかもしれません」
「……じゃあ」

つまり、ここから出るためには、その人を見つけなくてはいけない、ということだ。
手っ取り早く助かるには、それが一番に思えた。

「で、でも、他に人がいたからって、その人が殺人犯だって決まったわけじゃないですよね」

気休めのような言葉を言うナオに、反論する者は、誰もいなかった。


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