ONLOOKER Ⅳ
窓を見る。
わずかな傷が付いているだけで、あとは肩で息をするシュンと、その腕にしがみつくユカリが、写っていた。
掠れた声で、シュンは呟く。
「無駄に頑丈に作りやがって……」
ごとりと、丸椅子を床に置いた。
きっとこの学校で使われているガラス全てに同じことをしても、結果は変わらないのだろう。
もっと言うなら、窓に椅子を叩き込む大きな音も、シュンの叫び声も、ユカリの悲鳴も、二階に届いてすらいないに違いない。
電気も点けずに駆け込んだ暗い部屋には、虚しさと、シュンの荒い息遣いが響くだけだった。
「どうなってんだよ……ふざけんじゃねぇよ」
やり場のない怒りを押し殺せるほど、シュンは気が長くも、器用でもない。
その矛先は自然と、今一番近くにいる人間――ユカリに向いた。
「やっぱ……映研なんて入んなきゃよ、こんなことにはなんなかったんだよ」
「シュン、」
「お前がどうしてもって言うから入部したけど」
苛立たしげに歪む表情。
ユカリは、ぐっと拳を握った。