ONLOOKER Ⅳ
一年生のナオは、容姿こそスクリーン向きではあるが、少し積極性が足りない。
気が弱く、臆病で、自分よりも他人を優先させがちなところがあった。
現に今も、緊張しているのか、おどおどと目を泳がせて、小さな声でぼそぼそと話している。
「ナオは、休憩の間どこに?」
「あ、僕は……二階のトイレに」
「姿が見えなかったのは、その一回くらいだよな? 主役だったからずっとカメラの前にいたし」
「あ、はい。えと……か、髪型を直すのに、ちょっとかかっちゃいました、けど」
そう言って、襟足を触る。
今は外しているが、さっきまでは役用のウィッグを被っていて、髪型も長さも全く違ったのだ。
慣れない髪型に、苦戦していたのだろう。
「15分くらいで戻って来たかな」
「はい、たぶん。その時はまだ他に人もいて……一人すれ違いました」
そう言って目を伏せたナオは、竹田の死体を見た時からずっと、どこか呆然としている。
まだうまく現実味を持てないのかもしれない。