ONLOOKER Ⅳ
「僕は色々動き回ってたから……だいたいはマサトと一緒だったけど、あちこち行ったり来たりで」
ナツが、苦笑を浮かべた。
マサト、ナオと一緒に三人でいることが多かったのは事実だが、部長兼監督であるナツの役目は、撮影を仕切ることだけではない。
撮影場所の確保に走り回ったり小物が全て問題なく揃っているか確認したりと、なにかと忙しいものだ。
それを少しも苦にしないのは、やはり好きだからなのだろう。
元々この悠綺高校には存在しなかった映画研究部を、同じクラスの友人と、学内でも有名な二人の先輩を誘って立ち上げたのは、篠宮ナツ本人だった。
「だから、一人になるタイミングは多かったかもな」
「ナオがトイレに立った時でしたよね、ナツ先輩が中庭に出たの」
「あぁ、そうだったね」
明日の明るいうち、昼休みでも活用して撮るつもりだったシーンが、この悠綺高校の広大な中庭での予定だったのだ。
植物の位置や機材を置けそうな場所など、あらかじめ確認しておいて無駄ではない。