ONLOOKER Ⅳ


なにしろ、そもそもが、怪しいにもほどがあるのだ。
“身分違い”とも言える二人に、接点があることからして。
普段はほとんど接触しない二人が、部活動の時に限って、よく一緒にいることからして。
いつも怯えたようにシュンに接するユカリと、常に仏頂面で他人を寄せ付けないシュンが、“そういう関係”であることからして。
そしてその不自然さを、シュンもよくわかっているはずだ。
それなのにまるで、自分に怪しいところなどなにもないと自信を持っているかのように振る舞っている。
気まずそうにしたり、それ以上触れるなと誤魔化したりするならまだしも。

しかし、明らかに何かがおかしいとわかっているのに、誰もそれを指摘することはできなかった。
それは、シュンが先輩であることや、彼が悠綺高校では非常に珍しいタイプの人間であること、喧嘩で負けなしと噂があることや、整った顔に浮かべる表情の険悪さなどとは、何一つ関係がなかった。

“映研部だから”言えないのだ。
ここが映画を愛する者の集まりであり、そして荻野シュンの父親が、日本を代表する映画監督、荻野白秋だから。
だから彼らは、何もいうことができなかった。




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