ONLOOKER Ⅳ



「直姫はどうなんだ? 部活、何か入ったのか」
「いえ、自分は……そもそも何があるのかもよく知りませんし」
「夏生は全部把握してるにょろよー。細かく言うと全部で五十くらいあるのに」
「え! そうなんですか? すごい……」
「なっちゃん会長のおすすめは?」
「直姫には、そーだな……カバディ部か、詩吟部か……郷土料理研究会かな」
「なにを基準にしてどんな統計を取ったらそんなおすすめが出てくるんですか」

運動部は女だとバレるし、頭脳明晰な優等生に真っ先に勧誘が来そうな数学研究部や化学研究部などについては、本人が「なんで授業以外でまで勉強しなくちゃいけないんですか」とばっさり切り捨てた。
それならば直姫が興味を示すものを、と考えてみるが、これが見事に思い付かない。

「えーっと……バイオリンは?」
「一応やってますけど……父親が、自分の趣味を押し付けたようなもので。金持ちっぽい習い事をさせたかったみたいです」
「はれ。もしかして、他にもなんかやってたにょろ?」
「えぇ、まぁ、楽器は一通り。あとは茶道とか華道とか……上達しなくてつまんないから、全部すぐやめちゃいましたけど」
「うーん……部活でまでやる気はなさそうだね……」

バイオリンだけ続けているのは、全てやめてしまうとまた次々と新しい習い事をさせようとするから、らしい。
直姫も直姫だが、父親もなかなかに強者だ。



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