ONLOOKER Ⅳ



「語学はどうだろう。悠綺は語学系の部活動が種類豊富だぞ?」
「語学ですか……でも選択科目でドイツ語取ってるしな。三カ国語ぐらいできれば十分な気しますし」

何を提案しても、気だるげな一言で却下に終わらせる直姫。
生徒会活動だけやっておけば内申点は心配いらないと考えているのか、相変わらず消極的だ。
と、そんな直姫を見ていた真琴が、「あ」と声を上げた。

「そうだ直姫、映画研究部があるよ」
「おぉ! それがあったにゃ、ナイスまこちゃん」

ようやく思い付いた、直姫の趣味らしき趣味。
確かに、遅くまで映画を見てたとかで、教室で休み時間に居眠りしていることがよくある。
珍しく文庫本でないものを読んでいると思えば大抵は映画雑誌だし、自宅には直姫専用のホームシアターがあるというようなこともいつか言っていた。
逆に言えば、それ以外で直姫の嗜好を、全く垣間見たことがないのだ。

可愛い後輩の学園生活に少しでも彩りを、と考えたのか、紅たちが目を輝かせる、が。

「映研の部室なら、同じ階だぞ?」
「悠綺部の斜め向かいのねー」
「悠綺部か……あそこ近寄りたくないな」

映画、作るほうには興味ないですし。
静かにそう言った直姫の言葉によって、そんな優しい先輩心も、呆気なく無に帰されたのだった。


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