ONLOOKER Ⅳ
「僕、最初はそんな、……そんなことになると思ってなくて。また怒られるかなって思って、もう帰りますって、言ったんです。でも……僕の格好、見て、」
「もういいよ、ナオくん……」
真っ青な泣き顔で、ヨリコが呻き声にも近い泣き声を上げる。
そんな状態のヨリコにも、肩を震わせるナオにも、かける言葉は見つからない。
ナオの姿は確かに、男にしておくのは勿体ないと言ってよかった。
毛先だけがゆるくカールした、黒髪のロングヘア――ユカリの髪型にそっくりのかつらを被って、紺のセーラー服に、ハーフ丈のキュロットパンツ。
今回の映画の主役は女の子で、それがこの映画での、彼の衣装だったのだ。
あえて女主人公を男子生徒が演じるという、一種の試みのつもりだった。
しかしそれを見た竹田は、無理にナオに迫ってきた。
当然抵抗したナオに、『言うことを聞かなければ、西寺ナオは裏口入学だと噂を流す』と言って。