ONLOOKER Ⅳ
「もう、こうするしか、なかったんです……!」
竹田が後ろを向いた一瞬の隙をついて、そばにあった花瓶に手を伸ばした。
中身を床に引っくり返して、一切の手加減をせずに、殴り付けた。
必死だったのだ。
床などに飛び散った血は、手近な布巾で拭った。
それを聞いて、ユカリが声を上げる。
「え……じゃあ、あの布巾って」
ナツは、マサトの肩を叩いて、すぐに部屋を出ようとした。
シュンが、俺も行く、と、後に続く。
数分もしないうちに、手に赤茶と白の布を持って、戻って来た。
「ユカリ先輩、血糊つきの小道具だと思ったんですね。今回撮ってるの、ホラーだったから……」
「全部あいつの血だったんだよ。ほら、変色してきてる」
ほら、とシュンは言ったが、血のついたその布巾をわざわざ見たがる者はいなかった。
部室へ向かった三人の他は、コウキが一瞬ちらりと視線をやったくらいだ。