ONLOOKER Ⅳ



「じゃあ、竹田先生が、ユカリ先輩にいきなり襲いかかったのは」

コウキが、ぽつりと呟く。やけに冷静な口調だった。
放心状態にも近い。

「ナオが、とどめを刺しに来たって、思ったからじゃ」

長い黒髪。
毛先にかかったゆるいカール。
大きな目と、白い肌。

すでに出血で朦朧としていた竹田が見間違えるには、それだけ似ていれば十分だ。
脅すつもりだった生徒から思わぬ隙を突かれ、重い花瓶で殴られて。
なんとか死なずにすんだと思ったのに、また戻ってきた。
竹田の反撃は、必死だった。
ユカリの袖の下に残る痣が、それを物語っている。
竹田は、少なくともユカリに対しては、殺すつもりで向かってきていた。



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