気がつけば愛でした
その日、静奈は珍しく遅刻ギリギリだった。
「どうして今日に限って寝坊するかな~。」
午前中は社長が会議のため、書類を用意しておく必要があったのに。
人まばらな会社に入り、もう誰も乗っていないエレベーターに急いで乗り込む。
時計を見て、間に合ったとホッとした時、閉まりかけたエレベーターにガッと手がかけられた。
反動でエレベーターの扉が開くと、そこには息を乱した高柳がいた。
「高柳さん!」
「間に合った…」
ホッとしたようにエレベーターに乗り込む。
高柳も珍しくギリギリだったようだ。
「珍しいですね?」
「あぁ…まぁな…」
ため息をしつつ、サッとスーツの乱れを直す。サラサラの黒髪が揺れた。
「高柳さんも寝坊ですか?」
「家を出るのが遅くなっただけ。お前は寝坊だろ?」
フフンとバカにしたように鼻で笑う。
図星で何も言い返せず、ムゥと睨むしかできなかった。
家を出るのが遅くなったって、要は寝坊じゃないの!?
そう思ったがエレベーターはあっという間に営業課フロアに着いた。
「今日、お前が同行だろ?よろしくな。」
そういってエレベーターを出て行った。