気がつけば愛でした
社長であるのに気取った所もなく、社員に対しても優しい。
働きやすい職場だと静奈は思っている。
しかし。仕事も出来て、顔立ちも整っており、社内でも1、2を争うイケメンだというのに、社長と高柳とではどうしてこうも違うのか。
静奈は心の中でそう愚痴った。
社内ではどちらが良いかなんてよく言われているらしいが、静奈は断然、社長派だった。
高柳なんてお断りよ。
あんな冷たいやつの何が良いのかさっぱりわからない。
そう思いながら、フッと今朝の事を思い出し、気持ちが一気にへこんだ。
ヤなこと思い出しちゃったよ。
「ん?静奈ちゃん?何ひとりで百面相してるんだ?」
「なんでもありません。橘とお呼び下さいね、社長。」
“連れないなぁ”と笑いながら、部下をフランクに呼ぶ社長は出て行った 。